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グレーのキャンバス [spirit]

3.11大震災から11カ月。

被災地の子供達を元気にしようとある電気会社が試みたプライベート映像撮影。
10年後の自分へのメッセージ」という企画です。先日、その取材番組を見ました。

地元の小学校に通う子供達の日常は、まさに瓦礫の通学路を歩くところから始まります。
まだ何色にも染まらない子供達の目に、脳裏に、毎日毎日焼き付けられるこの光景からは、
未来の自分を想像する余白など生まれて来ようがないと思えてきます。

だからこそ子供達の目や心を未来に向かせたいと、このような試みが行われたのでしょう。

震災がないとしても、もとより日本の教育は個人の未来像を描かせることが不得手です。
平時にあっても自分の未来を語れない、またはイメージしたことが無いために、
就職活動で自分自身を表現できないと悩む若者には日頃たくさん接して来ましたが、
東北の子供たちが直面しているこの現実はそういうこととは全く次元が違います。

心のキャンバスに色が無いのではなく、何色かに染まる前に
全面グレーに染まってしまった状態だと言ってもいいと思います。

何日も悩んだ末に、カメラの前に立ち「少しでも前に進みたい」という
今の自分の気持ち」を表現することで精一杯の子供たちもいました。
とても痛々しくて、未来に目を向けさせようという試みそのものが残酷な優しさにも
思えました。

子供たちが日常を取り戻すには何年も年数がかかると思います。
戦後の日本が焼け野原から立ち直ったことを思えば、瓦礫の通学路の光景が子供たちを
強くたくましく育てていくのかもしれません。それも一つの考え方ではあるけれど
それは、大人の心が受けとめる世界とは比較にならないほど衝撃が大きすぎます。

生活の場を、変えたくても変えられない様々な事情もあると思いますが
せめて「大人のこころ」が育つまでの間、瓦礫の通学路ではなく
草花が咲き、風がそよぎ、鳥がさえずり、家々から笑い声や食卓の湯気が薫るような
環境に、一時的にでもいいから身を置いて過ごして欲しいと思えてなりません。

生活環境を変えることで、子供たちは瓦礫の映像を「津波とともに止まってしまった時間
ではなく、「過去の記憶」として脳裏に格納することができて、そして初めて、
全面グレーのキャンバスに色彩を載せていくことができるのではないかと思うのです。


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